サウジショック2016──原油暴落の日に為替市場で何が起きたか
相場が動いた日

サウジショック2016──原油暴落の日に為替市場で何が起きたか

2016年1月、あの日のチャートが動き出した瞬間

2016年の冬、まだ正月気分も抜けきらない1月半ば。都内のカフェで、僕はいつものトレード仲間の俊介さんと相場談義をしていた。話題は年始からじわじわ値を崩していた原油価格について。すると、その日突如としてWTI原油が一気に30ドル割れへ急落し、同時にカナダドルやロシアルーブルも大きく売られ、為替市場が騒然となった。

俊介さんの「油断」と、システムの意外な落とし穴

俊介さんの「油断」と、システムの意外な落とし穴

俊介さんは当時、主要通貨ペアを中心にいくつかのシステムを運用していた。USD/JPYやEUR/USDでのシステムトレードがメインだったこともあり、「資源国通貨の急変動はあまり自分には関係ない」とどこか楽観的だった。その日も彼のシステムは通常稼働していた。

ところが、原油価格の暴落が始まると、クロス円の売りが一気に強まり、カナダドル円やロシアルーブル円だけでなく、豪ドル円、さらにはドル円自体まで連鎖的に乱高下。通常では考えられないスプレッドの拡大や、ストップ狩りのような鋭い値動きの連続。俊介さんのシステムでは、過去データで想定したボラティリティを大きく超える急激な動きに、逆張り系アルゴリズムが連続で損切りを繰り返した。

原油と為替──意外な「連動」の本質

俊介さんが痛感したのは、「直接取引していない資産クラスのショックが、想像以上に為替に波及する」という事実だった。原油暴落は、単にエネルギー市況だけでなく、カナダやロシア、さらには新興国全体の経常収支や財政懸念に直結する。そのため、資源国通貨はもちろん、リスクオフの連鎖で円が買われ、ドル円やユーロ円までもが巻き込まれる。彼のように一見「関係なさそう」なドル円中心の運用でも、システムのパラメータが想定していた範囲を一瞬で逸脱してしまった。

「非連続」のリスク──システムが苦手な瞬間

「非連続」のリスク──システムが苦手な瞬間

実はこのとき、俊介さんのシステムで最も苦戦したのは、「リスクオフの大きな一波で損切り、直後に逆方向へV字回復する」パターン。裁量トレーダーなら「ここは様子見」とブレーキを踏める場面でも、システムは規則どおりに注文を投げ続ける。相場の急変が「一気に進み、一気に戻る」とき、短期の順張り・逆張りどちらも想定外の損失を抱えやすくなる。

こうした「非連続な動き」への耐性は、過去の通常ボラティリティの中で最適化されてきたシステムほど弱い。俊介さんはそのことを、リアルタイムで資金が削られていく数字を見ながら実感したという。

相場全体を見る習慣の重要性

俊介さんがこの経験を通じて変わったのは、「直接関係なさそうな指標や資産クラスも必ずチェックする」という習慣。原油価格や株式市場、地政学的ニュース──一見為替とは遠い話題も、想像以上に為替レートへ波及してくる。特に近年は、AI時代に入り様々な情報が複雑に絡み合って瞬時に相場へ反映されるようになったので、通貨ペア以外の「世界の動き」を察知することがますます大切になった。

あの日からの学び──「知らないリスク」にどう向き合うか

あの日からの学び──「知らないリスク」にどう向き合うか

俊介さんはシステムトレードのパラメータだけでは解決できないリスク――「想定の外」に飛び出す相場――に初めて本気で向き合った。その後は、主要通貨だけでなく、資源国通貨や株価指数、コモディティの値動きにも目を配るようになった。止めどき・再稼働の基準も、為替だけでなく原油や株価、ニュースヘッドラインの動向を含めて柔軟に判断するようになった。

システムを使うなら「世界を俯瞰する目」を

この日の原油暴落で、俊介さんは「システムを信じれば勝てる」ではなく、「システムと一緒に世界全体を見渡すこと」が大事だと痛感した。どこで何が起きてもおかしくない時代、知らないリスクが口を開けて待っていることもある。だからこそ、あの日の記憶は今もトレードの大切な指針になっている。

俊介さんは今も、好奇心を忘れず「為替以外の動き」にも目を凝らしてチャートに向かっている。相場が大きく動いた日こそ、次の一歩のための貴重なヒントが隠れているのだから。


※ FXおよび自動売買には損失が生じる可能性があります。本記事は一般的な解説であり、特定の投資判断や運用成果を保証するものではありません。

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